「アカツキのり」の取り組みについて


◎『アカツキ』は味のかけ橋

1. 産地紹介
  当組合は、熊本市の西南部に位置し、地区の西側が海の幸の豊富な有明海に面し、のり養殖業はもとより、アサリ・ハマグリの採貝業、クルマエビ漁などの漁業が活発に行われております。
特に、一級河川「緑川」を有する広大な干潟漁場で、豊富な水量と栄養塩があり、のり養殖業については恵まれた漁場で、古くからさかんに行われておりましたが、漁業者の高齢化等により、現在は9名の行使者で養殖が行われております。

2. 「アカツキのり」の目的
  価格低迷、後継者不足により、のり養殖者の廃業が相次ぐ中、何か打開策はないかと検討を重ねておりました。当時は食の追及を求めて、「量より質へ」という傾向が見受けられました。消費者の皆様から、「おいしいのりを食べたい。」、また、流通業界からも「うまいのりづくり」の要望が高まっていましたので、最後の生き残りをかけて平成2年度から取り組みを始めました。

3. 「アカツキのり」の特性
  特色は、乾海苔の光沢に優れている。乾海苔の歯切れ良い。乾海苔の甘味が
強い。乾海苔の香りが強い。という特色が上げられます。
この品種は、東京大学の三浦昭雄教授によって開発育成され、母親がスサビ
緑芽、父親がスサビ赤めで、乾海苔に求められている、「歯切れ」・「黒さ」の
良さを追求し遺伝子改良が行われ、その結果「甘味」・「香り」がプラスされ
たもので、「うまいのりづくり」を目的に行っています。

4. 「川口アカツキ」ブランドの確立
  次の項目に重点をおき、ブランドの確立に努めると共、商社の皆様に安心して供給いただける製品づくりを実施しています。
 (1).「アカツキのり」は、すべて支柱漁場で養殖し、採苗→育苗→摘採→生産まで、一貫した共同管理体制をとり、製品の統一化に努めている。
   また、「アカツキのり」養殖場所についても、他品種混入を防止する為、「アカツキのり」養殖区域と他品種養殖区域というように、区分けして養殖をしております。
 (2).格付け検査については、色合わせだけでなく、実際に食して、「味」・「香り」・「焼き色」の点を重視して行っております。
 (3).品質向上を図るために、生ノリ段階で浮草・ワラ・小エビなどの異物を取り除く異物除去機、加工した乾海苔から異物が混入していないか見分ける異物選別機を生産者全員が設備し、品質の管理を徹底しています。
   また、当組合乾のり検査場にも異物検査機を導入しており、随時、抜き打ち検査を実施し、品質管理に努めております。
 (4).食品としての自覚を持ち、製造に使用する海水についても、備長炭を使用し、海水に含まれる細菌等を吸収させ浄化した海水を使用しています。




ノリは「海の野菜」といわれるように、ビタミン、ミネラル、食物繊維、
鉄分、カルシウムなどの色んな栄養素を含む健康食品です。






○ノリ品質向上へ備長炭
当組合は、養殖海苔の品質を向上させるために、水を浄化する働きがあるとされる備長炭を活用する取り組みを行なっています。
摘採した海苔(生ノリ)は乾海苔に加工するまでの間、海水で満たした水槽で一時保管されます。その海水は組合がポンプを使って海から直接取り水し、荷揚げ場に設けられた海水槽(400トン)にくみ上げ、のり生産者に毎日提供しています。
当組合は、品質管理を徹底して養殖海苔のブランド化をめざしておりますが、備長炭の活用もその一環です。




・代表理事組合長(藤森隆美)と販売担当職員(内村公一)による


備長炭設置作業風景              平成16年11月撮影





○環境保全活動について


①.森を守る植林活動 「山・川・海はつながっています!!」
平成5年度より、森の再生で海をよみがえらせるため、緑川上流の国有林にケヤキ・カエデなどの広葉樹を植栽して「漁民の森」の森づくりに取り組んでいます。





NPO21金峰・有明記念植樹・・平成14年度より
自然豊かな森の都「熊本県」、山林は適度な保水力を持ち、川や海に様々な栄養分を供給し、水産生物にとってはなくてはならない存在です。





②.緑川河口域のヨシ原の再生活動
  日本書紀に「豊葦原瑞穂国(とよあしはらみずほのくに)」と称されたように太古の昔からヨシ(葦)原と水田は日本の原風景であった。緑川河口のヨシ原も郷土の原風景として地域に親しまれてきた。このヨシ原のヨシは、良質で細めであるため乾ノリの製造に欠かせない御簾の材料として全国で利用されてきた。しかし、御簾の材料がプラスチック製品に取って代わられヨシの需要が無くなるとともに、ヨシ原は放置され手入れが滞り、ヨシ原が持つ水質浄化機能の低下などが憂慮されはじめました。 
  そこで、平成18年3月に河川管理者や隣接4漁協、環境団体などをメンバーに「ヨシ焼きin緑川実行委員会」を立上げ、ヨシの世代更新の促進、害虫の駆除などヨシ原の環境復元を目的に緑川河口でのヨシ焼きを行うことにし、第1回を平成18年11月2日に実施し、以後、毎年100名ほどの参加者で実施しています。
  今後、地域のヨシの新芽の発育を促す風物詩 として定着することが期待されています。




ヨシ焼きの風景





③.緑川河口のゴミの回収活動
  「緑川」は、ノリ・アサリ等魚貝類に豊富な栄養塩をもたらし、漁業者は、恩恵を受ける反面、上流から流れてくる植物片や流木のほか、ビニール袋やペットボトル等の生活ゴミなどの回収にも苦慮しています。そこで、緑川流域や河口の漁業協同組合などへ呼びかけ、平成7年10月に「緑川河口ゴミ対策協議会」を発足させ、毎年、ノリ養殖期間は作業員を雇用しゴミの回収作業を行っており、毎年120m3程度回収しています。









④.河川内の水草の除去活動
  緑川河口近くへ流入している二級河川「天明新川」では、春から夏にかけて水草(特定外来生物ボタンウキクサ(ウォーターレタス))が繁茂し、河川の水質が悪化しやすく、水草が流出すると海面での漁業への支障と漁場環境の悪化を招きます。このため行政機関、隣接4漁協、農業団体などと、昭和52年に設立した「天明新川水草対策協議会」で河川内の水草を除去する作業を行っており、毎年10,000~30,000㎡程度を除去しています。


重機を使用して水草を除去




最後に・・・
  のり養殖漁場では、アサリ・ハマグリ漁業も盛んに行われております。
ハマグリについて紹介したいと思います。ハマグリといえば、古くから平安時代の貴族の女性が遊んだ貝合わせのように、日本人とは縁の深い水産物の一つです。
川口漁協のハマグリは、日本で昔から採られている「本ハマグリ」、国内で流通している量は、わずか2%と貴重なものです。市場などで出回っているのはシナハマグリで、中国や朝鮮半島原産の輸入品がおよそ90%を占め、残り8%は主に日本の外洋で採れるチョウセンハマグリです。
ハマグリには、ビタミンB郡・タウリン・鉄・マグネシウムが豊富で血液中の余分なコレステロールを排出し体調を整える作用もあり、旨み成分である「コハク酸」も多く含まれ、この美味しいハマグリを是非食べていただきたいと思います。
「将来の漁業の展望」は、漁場の環境保全活動はもとより、採りながら育てる資源管理に重点をおき、漁場の生産力向上を図っていきたいと思いますが、漁業者だけの力には限界があります。数年前から植林活動に取り組んでいますが、自然豊かな森の都「熊本県」、山林は適度な保水力を持ち、川や海に様々な栄養分を供給し、水産生物にとってはなくてはならない存在です。
もっと海に興味を持っていただき、この「豊かな海」を一緒に守っていき、子や孫へと永遠に残してやれたら、微力ながら私たちの役割も果たせて、いいなーと思っております。